ジャン=フィリップ・トゥーサンのマリー4部作のこと

たまには本の話。
ジャン=フィリップ・トゥーサンのマリー4部作を読み終えた。といっても、「愛しあう」を読んだのはずいぶん昔。2003年だから、およそ20年あるな。最初の2冊は集英社。3冊目は講談社。そして、最後の1冊は邦訳が出そうもないので、英訳で。
わけあって、昨年、最初の3冊を読み直し、4冊目は昨日読了。
トゥーサンというと、読んだことある人はわかるけど、どことなくずれたところのある主人公のコメディというのかな。デビュー作の「浴室」はよく売れたと思う。映画化もされたし。ぼくとしては3作目の「カメラ」が映画も含めて好きだけど。
 マリー4部作は、もう少しウェットな話。一緒にいると喧嘩してしまうので、別れることを決めたところから始まる。別れる最後に、マリーが個展を開催する日本に行く。でも主人公は逃げ出して京都に行ってしまう。
激しい愛ではなく、どうしようもなく零れ落ちてしまう愛に、けっこうぐっときます。
最後の「Naked」の後半、英語が得意ではないぼくでも、心に染み入るような景色でした。ということで、まだちょっと、しみじみした感じでいます。
ところで、4部作の最後だけ邦訳されないっていうのは、まあ、困るよね。大人の事情、たぶん最初の2冊が売れなかったんだろうなあ。それで集英社から講談社になったけど。
それにしても、かつて売れていた作家が、売れなくなると翻訳されなくなるっていうのは、残酷かなあと思う。
ウィリアム・ギブスンの新作だって、日本で出版される気配がない。ジョナサン・キャロルなんかも、次々に翻訳されていたのに、今は出ない。まあ、しょうがないですけどね。
 
「Naked」については、いずれ「トーキングヘッズ叢書」に書こうと思っています。