こちら葛飾区水元公園前通信783

tenshinokuma2011-11-24

 すいません。先月、お話ししたように、今回も宣伝ではじめます。
 「スマートグリッドがわかる」という本を、日本経済新聞出版社から刊行しました。11月24日付の「日本経済新聞」の3面には広告も掲載していただきました(この場合、まあ、新聞に名前がのってしかったというのは、言わないのかもしれないけど)日経文庫の一冊ということで、文庫ですけど新書サイズです。あまり高い本ではありません。でもまあ、関心の無い人には役立たないので、せめて書店でみかけたら、手に取って下さい、と言っておきます。
 スマートグリッドというものの本はたくさん出ているのですが、技術の本ではなく経営がテーマというのが、類書と違っているのですが、そういうところが読者にわかってもらえるといいんですけどね。ここで、おまえに経営なんてわかるわけないだろ、なんていう突っ込みもありそうですけど。
 でもまあ、「千のプラトー」まで持ち出してしまうあたり、変な本になったな、とも思っています。

 それにしても、自分でも思うのだけど、この本は「トーキングヘッズ叢書」に書いている原稿と、ギャップがありますね。自分の中では、そうじゃないんだけどさ。題材が違うだけで。っていうことを考えていくと、やっぱり自分は古い人間なんだなって、そう思ってしまいます。どういうことかって?

 宇野常寛の「リトル・ピープルの時代」に続いて、村上  の「ゴーストの  」(講談社)を読みました。どちらもおもしろかった、というか、自分との視点の違いがすごく新鮮だった。二人とも、ぼくより下の世代。宇野のように、仮面ライダーを見たことってなかったし。
 「ゴースト」は、こういう本。主な対象は、美少女ゲーム、というべきか。でもそのゲームにおいて、常に選択されなかったシナリオがある。選ばれなかった女性はどこに行くのだろうか? というゴーストが、二次創作的なフィールドで、息づいている。そういった作品世界についての本、だと思う。まあ、ゲームそのものが一筋縄でいかないというか、「ときメモ」と「Air」が同列じゃないっていうか、そういうものなんだけどさ。
 村上にとって、そのような世界の構造ということが、批評の対象になっていく。それって、宇野がやっぱり、仮面ライダーに適用したフレームワークみたいなものだ。選ばれなかった女性、ゴースト、水子を救い上げていくために、「Air」とかは、とても重いゲームになっていく、みたいだ。
 でもね、そうしたゲームにひかれない自分がいるし、たぶん、そういう批評をしない自分がいる。ゲームの暗い部分にスポットをあてていくと、どんどん過剰に重くなってしまうし、そんなことはわかっている。そして、村上がいかに批評でとりあげようと、多くの人は「涼宮ハルヒ」の軽い話で十分。「エヴァンゲリオン」が重い話のように思えても、男女関係でいえば、女性のタイプの順列組合せでしかないという。そんなふうに思ってしまうのです。
 とまあ、そういう論じ方みたいなものが、古いんだろうなあって。ただ、同時に、古いままでいるっていうことには、その方が現実に対応しているんじゃないかっていう意識もあるんです。現実には、美少女ゲームのように複数のシナリオをクリアするっていうことは、まずないし。
 それに、世界の構造って、どうなんだろう。作品世界の構造を批評したとして、現実世界の構造を批評したことにはならないし。どうしてもぼく自身が語るときは、現実世界の回路からしか語れないな、という。それが、ぼく自身の限界でもあるんだろうな、ということなのです。
 で、それがどうして「スマートグリッドがわかる」に関係していうのかっていうと、この本はビジネス書であると同時に、スマートグリッドの背景にある、現実の世界の構造の変化についても、多少は語ったところがあるからです。そううったところが、本当は、トーキングヘッズ叢書に書いていることと地続きになっているって、自分では感じてはいるんですけどね。でも、たぶん、100人中100人はそういうことは感じないだろうし、それでいいとも思っています。

 それにしても、今月はなぜか、水力発電と出張の1カ月でした。高知県梼原町に日帰りで行ったのは、ちょっときつかったな。町役場の建物は隈研吾の設計でなかなか素敵だったし、木質ペレット工場も学校の裏にある小水力発電所も見たし、ウツボのたたきも食べたからいいんですけどね。
 山梨県北杜市には、水力発電を手掛ける電気工事会社の取材に行ったし、何より富山県黒部市宇奈月温泉にも行かせていただきました。宇奈月温泉は全国小水力サミットの分科会のコーディネーターとしてお声がかかったからなんですけど。あまりしゃべるのはうまくないのですが、温泉と地酒につられて参加してしまったわけです。疲れたけど、おもしろかったです。こじんまりした温泉街だけど、旅館はとてもきれいだったし、何より黒部川って川のほとんどが上流というような、急峻な山にはあちこち滝ばかりなんじゃないかっていうような、そんな景色を見ながら温泉につかるっていうのは、とてもすてきでした。それとは別に、公衆浴場(大人350円)にも入り、地元のおじさんの話を聞いたりもしましたけど。
 ということで、小水力サミットのスタッフと黒部市にはとても感謝です。

 釣りですか。逗子の小坪港に行ったけど、イマイチだったな。で、終わらせてしまうのであった。