辰巳湯(ふたたび)

tenshinokuma2013-01-18

 昨日は、清澄白河にある無人島プロダクションに行った。風間サチコ展が明日までだったので、あわてて、原稿を途中にして、行ったというわけ。
 といっても、風間サチコについて、予備知識があったわけではない。知人がツイッターで、行かなきゃ後悔する、と書いていたので、それではぜひ、と。でも、すっかり忘れていて、これも会田誠ツイッターで「これから行く」と書いていたのを読み、思い出したというわけ。
 深川資料館通りにあるギャラリーにあったのは、巨大な木版画。テーマはというと、原発事故をめぐる歴史が1枚の絵に濃縮されたものだ。旧内務省(現文部科学省)ビルに国会議事堂や経済産業省が接ぎ木された凱旋門に、中曽根康弘などの電子が飛び回っていたりとか、マークIといえば、福島第一原発のGEの型式だけど、これに重ねられているのが、ドイツの戦車のマークIだったり、とか。原発事故は突然あったものではなく、歴史の積み重ねの上に存在している。世界大戦があり、原爆があり、平和利用(という言い訳)があり、あるいは福島第一は元々は国有地であり、戦時中につくられた飛行場からは特攻隊が出撃し、一度は引揚者にはらいさげられながら、再び買収される、とか。
 しかし、こうして一枚の絵にされると(というか、そういう絵が何点か展示されているわけだけど)、ぼくたちの歴史はコミカルな悲劇なんだな、としか思えなくなってくる。まあ、そうなんだろうな。
 ということで、ギャラリーをあとにしたぼくが向かったのが、この近くにある辰巳湯。初めてじゃなく、前回はTさんの写真展の帰りだった。ここはつくりがユニークで、とにかく浴槽が広い。浴室の真ん中にどーんとおさまっている。さして大きな銭湯でもないのに。温度もちょうどいいので、本当にくつろげる、いい銭湯なのだけど、さらにほぼ露天風呂まであるからうれしい。ほぼ、というのは、あまり外が見えないからなんだけども、でも雰囲気はすてきだ。ぼくより先に露天風呂に入っていたおじさんは、よくここに来るらしく、この日は仕事帰りだけど、土曜日は開店する午後2時には来ているとか。昔はこのへんにも銭湯はたくさんあったとか、ここから両国方面に少しいったところにある常盤湯はお湯が熱いことで有名だとか、そんな話をしてくれた。熱いお湯はいやだけど、でもまあ、そのうちに行ってみよう。
 来週は、アンナ・カヴァンの「アサイラム・ピース」が刊行される。版元は国書刊行会。これは絶対読まなきゃ。と思いつつ、ニコルソン・ベイカーの新刊「ひと箱のマッチ」もまだ読んでいない。今は、森達也の「A3」(集英社文庫)を読んでいる。これは、ぜひ読んで欲しい本、と言っておく。読み終えたら、また感想なども。あえて言えば、地下鉄サリン事件は、事件そのものは忘れられつつあるのに、あのときに引き起こされた不安は、現在において暗い影となっているということだ。あの事件をきっかけに、社会は、人々は、すっかり退化しているのではないか、と思ってしまう。もっと言えば、生活保護切り下げも死刑容認も、人々の想像力の欠如がなせるわざだ、ということだ。
 「たまこまーけっと」の第二回。やっぱり、朝の連ドラだな。何だか、京アニであることをことさら楽しむためのアニメなのではないか、という気がしてきた。とりわけ、オープニングの演出など。ぼくには、「ささみさん@がんばらない」のがリアルかもしれない。「琴浦さん」も見てみようかと思う。