「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」(答申案

tenshinokuma2015-11-09

今回の答申案に対し、パブリックコメントを提出させていただきます。

1.答申案全体について。
教員の資質・能力向上のための答申案ということですが、教育現場の体制などの問題が解決されないまま、研修や採用、資格取得・更新などを変えたとしても、現場の教員は疲弊するだけで、何も改善しないのではないか。むしろ、負担が増えるだけではないか、と思います。
具体的な現場の問題としては、教員の1日の平均労働時間が12時間ということそのものが、問われるべきではないでしょうか。
そうした中にあって、唯一、「チーム学校」というアプローチが提案されたことは、評価されるべきだと思います。
2以下で、チーム学校を実現するための提案を、意見に変えさせていただきます。

2.チーム学校のスタッフについて
 答申案では、教員が教育に専念できる体制を目指すとされています。しかし、現実には、授業など学習指導以外のさまざまな仕事が現場にあります。こうした点に対応するためには、教員以外のスタッフの拡充も必要です。
 具体的には、以下の職員の拡充が必要ではないでしょうか。
 副校長:現在、1名というのが一般的ですが、学校の事務、渉外なども担った上で、教務にも関わるという激務となっており、2名に増員することが適切ではないかと思います。教務担当副校長と渉外・総務担当の副校長がいれば、地域との関わりもより強い関係をつくることができると思います。また、渉外・総務担当の副校長は教員以外のルートでの任命もでき、学校に開かれた経営をもたらすことが可能かと思います。
 スクールカウンセラー:現在、ほとんどの学校にいるスクールカウンセラーですが、週1〜2回の勤務となっています。これをフルタイムの学校のスタッフとして拡充し、どの学校にも「心の保健室」を設置していただきたいと思います。いじめや不登校などの問題はどの学校にもありますし、プライバシーに関わる問題も多いと思います。教員の心のケアも必要です。また、教員が十分臨床心理学の知識などを持っているとは限らず、生徒の心の問題にうまく対応できるとは限りませんし、対応するためには相応の知識の習得が必要となります。
 司書:図書室を活用していくための、職員として充実させるべきですし、学習指導を支援する力ともなります。
 実験助手:理科の実験などは、準備に時間がかかります。そのため、小学校教員や理科教員には負担となっています。実験を専門に行うスタッフが必要ではないでしょうか。

3.地域との連携について
 地域には、児童委員、さまざまな事業所、文化施設、スポーツクラブなど、さまざまな資源があります。こうした地域の教育環境をコーディネートし、地域とともに歩む学校であることが望まれます。
 その点から、ぜひとも行っていただきたいことの1つが、部活動、とりわけ運動部の地域活動化です。運動部の指導は中学校においては「教員のボランティア」となっているのが現状です。しかし、こうした学校内のボランティアを前提とした活動には無理があります。しかし、地域にはスポーツチームもあるでしょうし、スポーツクラブもあるかと思います。こうした資源を活用し、地域の運動部活動にすることで、教員の負担を減らし、教育に専念できるようになるのではないでしょうか。
 また、運動部は学校単位ではなく、地域単位で活動できればいいと思います。やりたい部活動を実施している学校に、放課後に移動して参加するということが可能になればいいと思います。すでに高校野球でも連合チームの参加が認められています。まして中学校の部活動では、地域の連合チームでの参加でいいのではないでしょうか。
 こうした活動は、当然ですが、文化部にも適用できると思います。音楽スクール、美術スクール、茶道教室などがあると思いますし、地域で演劇などの活動を行っているNPOなどもあると思います。
 一方、地域の福祉事業所との連携も考えられます。介護事業所と連携し、地域高齢者へのボランティア活動を行っていくことも可能ではないでしょうか。地域包括ケアという視点では、学校もまた、重要な地域資源です。また、こうした活動は、学校が地域に受け入れられることにもつながります。
 さらに、こうした活動をコーディネートしていく上でも、副校長の役割は重要なものとなってくるでしょう。したがって、副校長2人制は、この点からも必須だと考えられます。

4.チームアプローチと多職種連携について
 現在、介護福祉でとられている、地域包括ケア、他職種連携、チームアプローチといったものは、教育の分野でも適用できると思います。
 学習、健康、心理、スポーツ活動、文化活動、地域ボランティアなどを、ある部分では学校内のチームで、ある部分では学校外の協力を得て推進していくアプローチが必要だと思います。
 学校内で、担任まかせ、教科担当まかせのようなことが起こっていては、生徒は性格の合わない教師が担当になった場合に、逃げ場がありません。そのためにも、教員とそれ以外の養護教諭スクールカウンセラー、司書などのスタッフの視点が必要になるとも思います。また、外部の目として、スクールソーシャルワーカーや学校評議員の活用も欠かせません。

5.学校経営の能力向上について
 今回の答申では、教員の資質向上にスポットがあてられていますが、学習活動以外に、学校経営をすべての教員が学んでいくことも必要です。企業のみならず、行政をふくめたすべての組織に、経営があります。経営の質を向上させるためには、スタッフの一人ひとりが経営に関わっていくことが必要です。そのため、教員にも経営という視点をもって学校にかかわっていくことが必要です。また、経営という視点があってはじめて、チームアプローチも可能になってきます。学校の組織の管理のあり方も含め、教員、およびその他の学校スタッフに経営の視点を学んでもらい、学校そのものの質を向上させていただきたいと思います。

以上