十思湯

tenshinokuma2014-07-17

 銭湯っていうと、昭和の忘れ物みたいな雰囲気がある。そうして、どんどん閉店して消えていく存在。そう思っていた。
 十思湯は、今月の14日に開店したばかりの銭湯である。中央区小伝馬町、十思スクエアという公共施設の中にある。施設そのものは、中央区が整備し、民間に委託している。公設の銭湯ということでは、港区のふれあいの湯と同じだけれども、あちらは独立した建物。一方、十思スクエアには、保育園や介護施設がある。そんな中にあるので、表通りからは目立たず、さがすのに苦労した。でも、東京都公衆浴場組合に加盟している銭湯なのである。
 銭湯そのものは、決して大きくはないけれども、サウナもあるし、浴槽も快適な感じで設計されていて、悪くない。各カランにボディソープとリンスインシャンプーも置いてあるから、親切ともいえる。委託されているのは、うわさによると、廃業した台東区の梅の湯の方だとか。
 こうした形で銭湯ができるっていうのが、実はこれからのニーズとしてあるんだろうな、と思う。
 銭湯が廃業して困るのは、実は高齢者だ。高齢者世帯の方が、自治体が配布する入浴半額券を利用しているというのは、けっこう大事なことだ。第一に、高齢者世帯にとって、風呂を洗ったりすることそのものが大変だし、場合によっては風呂のない賃貸住宅に住んでいるケースもある。また、銭湯は社交場でもある。このことに目をつけている自治体は多く、地域包括支援センターの案内なんてよく置いてあるし、脱衣所のスペースをつかって、介護予防事業に取り組むケースもある。
 それでも、都内には銭湯が廃業して、銭湯空白地帯になってしまっている場所は少なくない。葛飾区でいえば、水元地区や東金町地区、足立区では、鹿浜地区といったところだ。実際に、葛飾区では水元地域に銭湯を設置したいと動いている区会議員もいる。
 こうした中にあって、十思湯は、公共施設の中に銭湯をつくることで、銭湯だけではなく、介護施設とのアクセス、あるいはイベントに対する関心を高めることができる。
 都市部の高齢化対策の一つのモデルケースなのかもしれない。
 銭湯は、一方で消えゆく風景なのだけれども、高齢化社会に対するニーズとして、別のあり方というのも考えられつつある。そんなことを思いながら、入浴したのでした。