小泉の原発ゼロは聞き流した方がいい理由

tenshinokuma2013-10-22

 このところ、小泉元首相が原発ゼロを主張していて、話題になっている。原発ゼロで、自民党も変わる、というか。
 別に、そういうことを言うのはかまわない。でも、こんなの、聞き流した方がいい。
 どういうことか。
 まず、額面通りに受け取るのは、バカ正直すぎる。小泉は郵政民営化選挙で、森元首相と芝居をしていたことを思い出して欲しい。干からびたチーズと缶ビールで森が説得したけど応じなかった、というアレである。小泉の考えは、何かあってのことで、持ち上げる必要はない。
 第二に、小泉が原発ゼロを持ち出すことで、かえって直面する問題が見えなくなっているということを指摘しておきたい。直面する問題とは、秘密保護法案であり、TPPであり、原発でいえば、汚染水問題と東電の破たん処理である。そこから目をそらすことになる。
 そもそも、原発の将来は、急いで決める話ではない。いずれにせよ、再稼働できるのは、20基を超えることはない。おそらく、10基程度。原子力規制委員会の作業を考えれば、早くて来年。川内原発玄海原発伊方原発、高浜原発伊方原発泊原発といったところだ。老朽化炉、活断層の恐れがある場所、大規模地震が予想される場所は不可能だし、BWRの再稼働には数年かかる。
 さらに、この数年の間に、おそらく六ヶ所再処理工場の破たんが予想される。活断層の調査が必要であること、稼働する原発が少なく、もんじゅが稼働せず、プルサーマルの必要性もないことなど、理由は多い。
 原発は、2030年以降も稼働するとしても、わずかなものでしかない。むしろ、バックエンド問題がのしかかってくることになる。いずれ、原子力政策が破たんするのは時間の問題だ。
 第三に、安倍政権は今のところ、高い支持率だが、消費税やその他の暴走する政策は、いつ支持率を急落させるかわからない。原子力政策もそのリスクの一つだ。このリスクを取り除くことによって、自民党政権を生きながらえさせることが、果たして正しいことなのかどうか。原発ゼロであっても、雇用の規制緩和が進み、消費税は上がっても社会保障制度の改革は進まず、TPPによって食のリスクや医療のリスクを背負わされるのでは、たまったものではない。
 だから、小泉の原発ゼロはスルーしておくべきなのだ。だいたい、過去の人なのだから。もし、小泉が本当にそう考えるなら、政界に戻ればいいだけのことだ。そのとき、支持しないけどさ。