こちら葛飾区水元公園前通信729

 金町の駅の南口にあるマクドは、北口とちがって、パソコン用のコンセントはないし、禁煙席と喫煙席の仕切りがきっちりしていないのでいやだな、とは思うけれど、自転車を置けるスペースがあるので、こっちを使うこともある。こっそり、壁にあるコンセントを使っている。
 流れている曲も違っていて、南口はJ-Pop、北口はジャズである。居心地は、実は北口の方がいい。

 年賀状がわりの牛乳通信のメール版こそ出したけれど、なんだか今月はすっかりごぶさたという気がしないでもないですね。
 結局、三郷の七福神めぐりは、3コースすべてまわりましました。冬休みの最終日である6日には、娘とかみさんの三人で彦成コース11の寺をまわったわけです。こちらのコースは彦成通りをまっすぐ歩けばいいという、とてもわかりやすいコースで、全7キロメートル。最後のスタンプは4時を少しまわってしまい、片付けてしまったところをわざわざ出してもらって押したのでした。散歩するにはすごくいいコースなので、いちばんのおすすめです。
 たどり着いたところは三郷の辺境、吉川市との境です。そこからバスで新三郷駅に出てから帰りました。

 そんな正月も終わり、1月もあと1週間とちょっと。身辺はあわただしいという状況です。今年は「分散型発電新聞」の仕事を増やしたいと思っているので、インタビューのセッティングとかもしなきゃいけないんですけれども。

 いろんな本を読んだので、忘れないうちに。
 まずは、赤坂真理の「モテたい理由」(講談社現代新書)は、本としてどうなの、というところはあります。斎藤美奈子ならもっと論理的に上手にまとめるものを、赤坂は思いつきで押し切り、最後は自分の過去を振り返って終わる。言葉を分析するのであれば、中村桃子の「〈性〉と日本語」(NHKブックス)がすごく面白くって、今読んでいるわけですが、そういうわけでもない。
 けれども、赤坂の小説に接してきた身としては、その、新書としておさまりが悪いというところが、本来小説となるものだったはず、そう思うのです。女性誌をいくら分解してみても、そこにあるのは、赤坂が感じる奇妙な居心地の悪さ。いつもとって付けたような“モテたい理由”。いい子を演じなきゃいけないというのは、本当であれば、多くの子供たちにとって普遍化されるべきものなのだろうけれども、そこまで落とし込めない。そういうところが、妙にいとおしかったりもします。
 そうではあるのだけれども、赤坂の本ということがなければ、おすすめはしません。

 見城徹の「編集者という病」(太田出版)は、幻冬舎の社長がどんな仕事をしてきたのか、編集者としてのスタンスや出版業界が抱える体質の問題などは、すごくよくわかります。
 ほんとうに、編集者としてパワフルだな、と思いつつ、結局のところ、自分がいかに見城と違うポジションにいるのか、ということもよくわかりました。
 本をつくるというとき、見城が作家によりそって、一番いい形で本を出そうというのは、よくわかるのです。ぼくもそう思います。けれども、それは必ずしも読者にとっていい形なのかどうかということは疑問なんです。売れる本はいい本だというのは、その通りだと思います。売れない本を作っている身からすれば、やっかみもあるでしょう。けれども、ぼくは本を出すということが、収益が得られるプロジェクトとして仕上がればいいと思っているし、100万部ではなく1000部しか売れない本でもいい本であればいいと思っているんです。それが確実に読者にとって必要な本であり、かつそのプロジェクトによって出版社が利益を得られるというものです。
 それから、見城は編集者としてのエゴがとても強いけれども、ぼくはその点はすごく逆です。むしろ、著者のエゴがどこにあるのか、それをいかに形あるもの、人に伝わるものにしていくことが大事なのか、ということを考えてしまうのです。それは、ぼくが見城と異なり、自らも文章を積極的に書く人間だからなのかもしれません。実際に、とても奇妙な仕事としては、ぼくがプロデュースした最近の本では、ぼく自身が編集者ではなく、著者の一人として原稿を書いています。編集者としてではなく、ということです。ぼくの強いエゴは、執筆者として出て行きます。
 抱えている病が違う、ということなんでしょう。

 木村汎の「プーチンのエネルギー戦略」(北星堂書店)は、仕事がらみで読んだのですが、サハリン2という石油・天然ガスプロジェクトがいかにして、日米の会社からロシアの会社のものとして取り上げられていったのかというのはよくわかるという点では、とても便利な本でした。ロシアは確かに石油や天然ガスで儲かっているし、それが国のあり方を決めています。けれども、その富は国民にまわっていないようなので、どこかで無理が生じるはずです。一昨年のウクライナへのガス供給ストップという事件が、プーチンにとって敗戦だったという分析は、サハリンでやられっぱなしだった企業の所属している国に身を置く人間としては、それなりに溜飲が下がるというのもあるのですが。

 酒類総合研究所の「うまい酒を科学する」(ソフトバンククリエイティブ新書)は、便利な本でした。基本はおさえてありますから。日本酒の造り方はともかく、みりんの造り方とか熊本の地酒、薩摩の赤酒あたりを紹介しているっていうのは、なかなか興味深いですし。でも、お役所仕事ですから、あまり深いところには入っていかないんですけれどもね。

 永田守弘の「官能小説の奥義」(集英社新書)なんかも読んでしまいました。いや、官能小説も奥が深いものだと感心したのでした。