こちら葛飾区水元公園前通信832

tenshinokuma2015-06-23

 おはようございますです。
 みなさん、いかがお過ごしでしょうか。

 そんなこんなで、6月はトークライブのために松江に行ったり富山に行ったり。
 松江では、国宝になる松江城に登ったり、境港で水木しげるロードをあるいたりしてきました。境線は、鬼太郎や目玉おやじねずみ男猫娘の列車があって、とりわけ猫娘がキュートです。
 こういう機会でもないと乗らないのが、寝台特急サンライズ出雲で行きました。列車の中で寝っ転がるっていうのは、悪くないです。

 富山では、科学博物館や美術館、それに廣貫堂資料館などに足を運びました。廣貫堂では、栄養ドリンクをいただいたし。
 北陸新幹線ができて、富山(たぶん、金沢も)はすごく近くなったと思います。

 今月は、なぜか、このミズなどの1位の作品を続けて読んでいます。
 ピエール・ルメートルの「この女アレックス」(文春文庫)は、今でもあちこちの本屋で平積みになっていますね。
 誘拐されたヒロインが助かるのかどうか、という話かと思いきや、ヒロインの過去が・・・という、ストーリーが二転三転するあたりは、見事な構成かな、とは思いました。でも、そのストーリーそのものが、ちょっとどうかなと。
 ただ、主人公の警部たち捜査する側はなかなかユニークな人物造形になっていて、こっちは好みなんですけどね。そこは、ダニエル・ペナックのマロセーヌシリーズに通じるのかもしれませんが。

 デヴィッド・ゴードンの「二流小説家」(早川書房)の方が、好みです。主人公のさえない小説家、生活のため、いろいろなペンネームでヴァンパイア物やハードボイルドやSFを書いているのですが、そこに死刑囚から自分の本を書いてくれという依頼。これを契機に、本名で本を出すことを考えるという。
 で、事件に巻き込まれるのですが、事件そのものは、ちょっと安っぽいんじゃないかとは思うけれども、主人公のまわりに女の人がたくさんいて、別れた妻、死刑囚がかつて殺した女性の双子の妹のストリッパー、死刑囚の弁護士補助のヴァンパイア好き女性、みんなけっこう美人でいいなって。でも、いちばん強力な女性は、主人公が家庭教師をしている女子高生。といっても、教え子どころかビジネスパートナーとして、主人公に執筆をたきつけ、何かあれば弁護士もつれてくる。天才お嬢さんといったところで、アニメのキャラにありそうなタイプ。
 なんか、そんな美女にかこまれたなさけない主人公っていうのが、ちょっといいです。
 事件の真実は二転三転、と。

 でも、これらにも増して、ローリー・リン・ドラモンドの「あなたに不利な証拠として」(早川書房)は、ミステリーという枠を超えて、心にぐっとくる短編集です。
 主人公は、いずれも女性の制服警察官。パトロールなどを行っています。
 いずれも、事件に直面するのですが、ミステリーという要素はほとんどありません。一部「傷跡」のようなミステリーの感触を持つものもありますが。犯罪小説というのも少し違うかな。犯罪をおかす側ではなく、対応する警察官の側に焦点が合わされていて。
 この短編集は、主人公たちが常に死と直面しなくてはいけないという、ある種の残酷な状況での人間のあり方、というものが描かれています。被害者は死んでいるし、同僚も殉職するし、自分もいつその立場に立つかわからない。あるいは、自ら正当防衛のために、殺してしまうこともある。それが誤認という可能性もある。
 死んでいる被害者の状況も、凄惨なものがあって、視覚的にも嗅覚的にも人にダメージを与えるものだったりする。
 けれども、そうした死が存在する中で生きていかなければならない、そうしたハードな女性警察官の生き方が、この短編集のテーマ。
 神経が磨り減るような生活の中では、恋愛は数少ない安らぎでしかなく、健康以前に煙草を吸って気を紛らわせることができなきゃ、まいってしまうというような、登場人物の喫煙率の高さ。
 ぼくたちは、普通は、死から遠いところで生活をしています。でも、死は存在しないわけではなく、容易に人の手によって作り出されることもあります。
 そんな中で生きていくということを思わせること、それが心にぐっときます。
 作者は実際に元警察官で、交通事故後に退職し、大学で創作を学んだあと、12年かけてこれらの短編を書いた、とか。時間をかければいいというものでもないけれども、ミステリー以前に、本当にすぐれた短編集だと思います。

 久住昌之原作、釣巻和画の「のの湯」の1巻。銭湯の快感が伝わるマンガです。興味のない人にはどうでもいいかもしれませんが、紹介されている銭湯はどこもおすすめ。唯一、行ったことのなかった蒲田温泉も先日、足を運び、黒湯につかってきました。
 ヒロインは風呂なしのアパートに住む、浅草で人力車を引っ張る女性。他に二人のアパート住人をまじえて、なんか仕事して風呂に入るって、いいよな、と。そのためには広い風呂、銭湯だなって。
 当然だけれど、女性の入浴シーンはたくさん描かれているわけですが、なんか人の身体の曲線ってきれいだなって、そんな感じで描かれています。

 とまあ、そんなこんなの6月でした。