こちら葛飾区水元公園前通信839

tenshinokuma2016-01-30

 あけましておめでとうございます。
 って、もう1月の半分以上終わってしまったわけですが、世の中、まだまだ賀詞交換会とかやっているので、いいことにしてください。
 ってか、2015年の年賀状そのものが、年末の発送になったくらいですから、まあ、何というか。

 まず、報告事項から。
 私ですが、今年1月から、会社員に戻りました。1月4日に設立された会社で、創立メンバーということで、仕事をさせていただいています。
 本社はシリコンバレーにある会社。まったく、そういうベンチャーにどうして縁があったのか、まるで謎です。世の中、わからないものです。
 しかも、担当はマーケティングですから。いやはや。そりゃあまあ、フィリップ・コトラーの本くらいは、読んだことがありますとも。
 まあ、事業内容は、エネルギー関係だし、電力小売り自由化にも関係しているので、そういうことか、と思われるかもしれませんね。
 かくして、ライター業は休業します。ジャーナリスト業は続けるつもりですが。
 会社が成功してM&Aができて、ぼくの居場所がなくなったり、あるいはつぶれちゃったりしたら、またライターに戻りますので、そのときはよろしくお願いいたします。まあ、成功してストックオプションでたくさんお金が入るといいなあ、といったところですが。そんなにうまくいくというものでもないでしょう。どっちにしろ、なれない仕事なので、いつまでもつのかな、とか思いつつも、楽天的に考えています。
 お金のことは別にして、電力小売り自由化が、本当に消費者に利益になるものにしていく、という点は、実は以前とあまり変わっていません。それを、文筆業でやるのか、実業でやるのか、という違いくらいかもしれません。
 オフィスは西新宿にあります。中古レコード屋めぐりが懐かしいですね。

 今年の七福神めぐりは、池上でした。友人Aと二人で、池上までは車で行ったのですが。池上七福神は、狭いエリアに集中しているので、まわる時間はたいしたことなかったです。でも、車での往復に時間がかかりましたね。

 まず、最初に紹介する本は、ヘンリー・ミンツバーグの「私たちはいつまで資本主義に従いつづけるのか」(ダイヤモンド社)です。昨年末の水野和夫の本とつながっている、という感じでしょうか。
 でも、ミンツバーグといえば、ドラッカーと並び称される経営学者です。個人的には、個をより重要視する点で、ドラッカーよりもミンツバーグの方が好きです。
 そのミンツバーグが、資本主義を批判するような本を書いたわけですから、ただごとじゃない、と思えますよね。
 ミンツバーグの主張は、こんな感じです。政府が力を持つと、国民に対して支配的になるし、民間が力を持つと、自由主義の利益優先社会になる、と。そして、前者が中国、後者がアメリカといったところでしょうか。冷戦以降は、自由主義の力が強くなり、結果として、たとえば貧富の差が拡大し、地球温暖化などの環境問題も深刻なものとなった。
 これらに対し、いわゆる市民団体、非営利法人などの多元的セクターの力が必要であり、政府、営利企業を含めた3つのセクターがバランスをとることが大事だということです。
 まず、ミンツバーグの現状認識は正しいと思います。まあ、企業のCSR活動でwin/winの関係なんか期待しない方がいいというのは、きつい言い方ですが、本音としてはその通りでしょう。
 多元的セクターがどうあるべきか。いずれにせよ、このセクターがもっと力を持つべきであることは、その通りだと思います。でも、うまくバランスがとれるのか、難しいかもしれません。
 そうした中にあって、高齢者福祉における地域包括ケアというのは、地域・自治体レベルでこのバランスをとろうという試みかもしれないと思います。むしろ、そうしたバランスをとらないことには、解決しない、というのをローカルで見せてくれているのかもしれません。

 円城塔の「エピローグ」(早川書房)と「プロローグ」(文芸春秋)も続けて読みました。裏と表みたいな作品ですが。ぼくとしては、「プロローグ」の方が好きです。人工知性が書く私小説、ってなところでしょうか。そういう設定の。
 よくできていると思います。思うけど。でも、世界の本質って、むしろこういうものかもしれないな、とも思います。

 1月なので、深夜アニメの話題も。
 一番のお気に入りは「だがしかし」。駄菓子屋の息子は漫画家を目指しているが、父親は駄菓子屋を継がせたいと思っている。そこに現れたのが、お菓子会社の経営者の娘。父親をスカウトするためにきたのだが、そのためには息子に駄菓子屋を継がせなくてはいけない。
 とまあ、そういった設定なんだけど、毎回のだがしのうんちくといい、ヒロインの変さといい、見ていて楽しいです。原作の掲載誌は「少年サンデー」なので、深夜アニメという雰囲気もなく、平和な気分になれます。

 「無彩限のファントム・ワールド」は、京アニの作品。設定が変すぎて、かえっておもしろいです。脳の変化でファントムが見えるようになったというのが、何がなんだか、という。
 少なくとも、暑苦しい「ユーフォニアム」よりは、よほど好きです。でも、そうじゃない人のが多いかも。

 RPG設定のアニメが、2つあって、対照的というのもまた、何というか。
 「この素晴らしき世界に祝福を」は、事故で死んだヒッキー青年が、ファンタジーの世界で生き返るという設定。その世界に行くのに、好きなものを1つだけ持っていっていいということなので、主人公はそのことを提案した女神を持っているのですが。けっこう、楽しいので、好きです。
 「灰と幻想のグリムガル」では、過去の記憶もないままに、ファンタジーの世界に放りだされた青年たちが、パーティを組み、その世界で生きていくという話。レベルが低いので、とにかくゴブリンを倒してお金を稼がなきゃいけないのだけれども、ゴブリンもまた生きるのに必死だし、罪もないゴブリンを殺さなきゃいけないという現実には、やるせないものがあります。でも、そういったファンタジーの世界の現実(といっていいものかどうか)は、なかなか美しい世界でもあります。

 見るのを途中でやめちゃったということで、おすすめはしないのだけれども、「シュバルツェスマーケン」は、東ドイツが舞台。地球を侵略するベータという生命体と戦うのだけれども、同時に冷戦状態にもなっている。東ドイツは、監視社会。こういったところで、過去が引き出されることには、意味はあるんだろうな、とも思う。有力者が演説で、「この危機的な状況においては、自由や平等や国家には有害」とか話すのを見ていて、いや、それって日本の未来のことか、とか。そんなことも思いました。

 しかし、2016年も、もう一か月もたつんですね。年賀状はまだつくっていません。

 最後に宣伝。
 トーキングヘッズ叢書No.65「食と酒のパラダイス」が刊行されました。今回もぜひ。