大間原発の問題

tenshinokuma2012-11-14

 写真は、今日、衆議院第一議員会館で開催された、国会エネルギー調査会(準備会)の写真。
 17回目のテーマは大間原発の是非。北海道南部の市町村が反対している。函館市の市長などが参加。
 この様子は、Ustで見られる。
 電源開発が10月1日に工事を再開した、大間原発は、いろいろな問題を抱えている。
 まず、函館市などが反対するのは当然だ。30km圏内なのに、何の意見も言わせてもらえない。何の見返りもないけれども、今となってはいまさら、でもある。ただ、押し付けられるだけなのだから。
 けれども、ことはそんなに単純ではない。
 大間原発は、フルMOXの原子炉、すなわち、核燃料をすべてプルトニウムの混じった燃料にできる特殊なものだ。これは、使いきれない再処理ででてきたプルトニウムを積極的に使うために建設されたということだ。通常の原発なら、3分の1までしかプルトニウムの混じったMOX燃料を使うことができない。
 そして、大間原発を推進するということは、核燃料サイクルから撤退しないということの意思表示でもある。撤退する、ということが言えないということでもある。
 なぜ、撤退しないか。撤退を表明してしまうと、即座に青森県は使用済み核燃料の受け入れを拒否することになる。これは、ほぼ即座に原発の運転が難しくなることを意味している。青森県は、再処理工場などの施設を受け入れることで、雇用と多くの交付金を得てきた。そうしなくては、青森経済が成り立たなかった、といえばいいのだろうか。同時に、最終処分場になることも拒否してきた。今、撤退するということは、少なくとも雇用の喪失と最終処分場(というか、このまま引き取られない使用済み燃料という事実)を受け入れることにもなりかねない。
 これがどのように深刻なことなのか。廃墟となった炭鉱と米軍基地の両方を受け入れるようなものだ(というか、米軍基地はすでにあるのだけど)。そして、そのことをくつがえすだけの意思決定が政府にできない以上、核燃料サイクルからの撤退もまた決断できない。
 本当なら、使用済み核燃料は、それぞれの原発のサイトに返却し、そこで当面の貯蔵をしていくことが現実的だし、青森県の経済支援は別途考えるべきことだろう。産炭地に4兆円もお金をつかったのに、人口は10分の1、というのは、今日の北海道の自治体の首長の言葉だが、もちろん青森にお金を使ってもそうなる可能性は低くはないのだけれども。
 もちろん、フルMOXということは、一般の核燃料よりも溶融しやすく(メルトダウンしやすく)、毒性の強いプルトニウムを多く含むという、一般の原発よりも危険性が高いプラントでもある。また、これも首長が発言していたことだけど、津軽海峡国際海峡であり、どこかの潜水艦がいるかもしれない。そのことを含めたテロ対策も課題ということだ。
 もちろん、活断層の可能性も指摘されている。というか、このことを考えれば、日本で原発を運転することそのものに、合理性がないわけだが。
 そして、大間原発を推進する経済合理性もない。電源開発の副社長は「国策なので」と首長に対して発言したという。もちろん、電源開発そのものが国策会社ではあるのだが、まがりなりにも民営化した会社でもある。
 最大2039年まで運転したとしても、大間原発の運転期間はおそらく25年に満たないだろう。しかも、発電コストは、1基しか建設されないことによる高い運用コスト、フルMOXという特殊なプラントであることによる建設コスト増、そしてMOX燃料そのものが安くはない。一説によると、一般の燃料の3倍ともいう。もちろん、取扱いも難しい。こうした原発を建設し、電力会社に販売したとしよう。電力会社が高い価格で買ってくれるという契約があるのであれば、電源開発のリスクは小さくなる。だが、そのコストはもちろん、電気料金に反映される。ただでさえ値上げというのに。大間原発の電気は、沖縄を除く9電力が需要規模に応じて買うことになっているので、9電力すべての電気料金に関わる。
 では、電力会社が適正な価格で買うとしたらどうか。当然だが、電源開発にとって不良資産となる。そのツケは株主にまわる。まあ、それならそれでいいように思うかもしれない。けれども、これは「国策」なのだとしたら、そのツケは税金で支払うことにもなりかねない。なぜなら、大間原発を切り離し、電源開発を優良な民間会社としていく、という選択がないわけではないからだ。
 いずれにせよ、大間原発は、経済合理性がなく、そのツケは何等かの形で国民が支払うことになる。