福田辞任のこと

 夕べはいきなりのニュースなので、とても驚いた。まだ組閣をして一ヶ月である。
 まず、誰が福田の首をとったのかが気になる。
 公明党だという話がある。どうなのだろうか。公明党の裏には、小沢一郎がいるような気がしてならない。

 実は、福田首相になって、自民党民主党の対立軸が見えなくなっていた。というのも、ぼくは現在の政治の対立軸は、大きな政府か小さな政府かということだと思っていたからだ。そして、小さな政府を指向したのが、小泉純一郎だった。
 けれども、小さな政府ではセーフティネットなど期待できるわけでもなく、地方と中央の格差ができるばかりだし、その結果が先の参議院選挙だったと思う。
 その結果を受けて、安倍が退陣し、福田内閣が誕生した。
 その福田のカラーというのは、結局のところ、大きな政府への郷愁だったのかもしれない、ということを示したのが、先の組閣だったと思う。郵政民営化反対組を取り入れた布陣は、小泉的なものへの決別だった。そこには、小沢が考える政治思想と近いものがあったはずだ。というのも、よく考えれば、小沢は田中角栄の系列なのだから。
 そして、そうした流れを見ると、昨年の大連立構想というのは、理解できなくもない。

 ということを考えていくと、福田は自民党ではなく自民党的なものを守るために、辞任したのではないか、という気がしてくる。
 福田の辞任によって、自民党は総裁選挙になるわけだが、ここであらためて、党内で小さな政府と大きな政府の対立が明確になってくると思う。それが小池と麻生ではないだろうか。あるいは、次の顔の布石として入閣させた野田聖子もいる。そして、自民党が割れてしまえば、大きな政府組みに対しては、小沢は支援できるだろう。小沢もまた、自民党的な政治家なのだから。そして小沢は再びキングメーカーとしての素質を発揮できることになる。

 小沢にしてみれば、今の民主党政権担当能力がないと評価しているわけだから、総選挙で過半数をとるよりも理想的な展開である。そして、そのことについていけない、小さな政府派の民主党議員は出て行けばいい。

 小沢はそもそも、新進党公明党と一緒だったという過去がある。大きな政府を目指す公明党は、そう悪い相手ではない。だとすれば、小沢―公明党というラインで、福田の首をとったとしても、おかしくはない。

 とまあ、そんなことを考えてしまう、今回の異常なタイミングでの辞任だったわけだが、思い出すのは、官房長官を同じように突然辞任したという過去である。

 福田はまた、孤立していたのではないか、とも思う。これは、ぼくが環境をテーマに仕事をしているせいかもしれないけれども、福田は今年初めのダボス会議に象徴されるように、環境をリードしたかったのではないか、と思うが、党がそれについていかなかった。今回の組閣で環境大臣のポストを公明党に渡したのも、そうであれば自民党に縛られずに走れると考えたのではなかったかと思う。
 でも、考えてみれば、総理は常に孤独なのだろうけれども。

 さて、今後だけれども、総裁選は麻生で決まるのではないだろうか。だが、そのまま総選挙に突入する、のだろうか。選挙をやったところで、参議院は変わらないのだから、どうなのだろうと。
 いずれにせよ、自民党が分裂しないことには、大連立は無理だと思う。

 それにしても、本当に気になるのは、誰が総理になるかではなく、どういう政治思想が日本に受け入れられるのかということなのだけれども、そういう話はあまりない。

 とまあ、いろいろ考えてしまうわけだが、考えてもしょうがないか。
 たとえば、憲法を改正したいような政党を支持するつもりはまるでないし、そういう人たちにはさっさと退場してもらいたい、と思うわけです。