こちら葛飾区水元公園前通信720

 八木教広の「クレイモア」をまとめて12巻まで古本屋で買った。けれど、いつ読むんだろうか?

 今月は風邪で喉をやられていて、とてもつらいのだけれど、そうであるにもかかわらず、ワインの試飲会に2回も行ってしまった。しょうがないやつだなあって思われそうだけど、その通りですね。いや、そういうことじゃないんです。たまに試飲をして、自分の味覚を確認することって、必要だなあって。それは、本を読んだり音楽を聴いたりすることと似ているのだけれども、テイスティングをする中で、ワインというもの(日本酒も、あるいはそのほかのお酒だって同じだけれども)を読み取っていくっていうのは、それはすごく大切なことなんです。そうした中で、自分ばどんなワインを好きなのか、そんなことも確認できるし。それは本当に、いろいろな小説を読みながら、自分はこの小説がすきだったんだなあって思うことと同じなんです。
 そんなわけで、ぼくの好きなワインですけれど、行きつくところ、個性豊かなワイン、としか言えないですね。それはやはり、中国やアフリカの小説を楽しんで読んでしまう、そういうことと似ているのではないか。そう思います。
 そんなわけで、大丸で買ったワインは2本。一つは、スペインワインで、テンプラニーリョのワインを20年寝かせたもの。独特の雑味が消えて、ほんとうにきれいに熟成したワインでした。産地はラ・マンチャ、VEREDA MAYOR1986というワインです。もう1本は、フランスのアルザスのワイン、DOMAINE MARC TEMPEのリースリング2004。オーガニックワインで、すばらしい香りです。ただし、辛口すぎてちょっと味わいに物足りないところがあるのですが、そのバランスの悪さがいいのではないか、と思うのでした。たぶん、香りを楽しみながら、軽く飲めるのではないか、と。
 BMOという会社の試飲会では、次の2本がちょっと感動でした。一つは、グランジ・フィリップ・ロゼ・ジプシー。甘口、ではあるのだけれども、甘いオレンジの味と香り、とでもいうのかな。何か、ワインとは違う世界に連れて行ってくれるものでした。スタッフに聞いてみると、すぐに売りきれてしまうとか。もう一つは、イタリアワイン。エルラド・ヴィヴェルティのバローロ。しっかりとしたやわらかい渋みや熟成した香り、味わいの中に、やたらと新鮮な果実の香りと味が隠れていて、なんかやられたなあっていう感じです。いわゆる、ツンデレみたいなものですかね。こっちがかまえていても、その新鮮さを見つけ出したら、もう気持ちを解きほぐしてしまうっていう。あとで値段を見たら、けっこう高いワインだったので、さすがだよなあって思うのでした。
 ぼくにはワインについて語るべきうんちくなんて、少しもないのだけれども、お酒を読む、ということはやっぱり、きちんとやってみる価値はあるって思うのです。「神の雫」がいい作品だなあって思うのは、それはお酒に対してきちんと向き合う、そういうことを示しているからだと思います。スノッブなのって、すごく嫌いだけれども。

 今月のおすすめ本は、竹森俊平の「1997年−世界を変えた金融危機」(朝日新書)かもしれません。
 1997年の金融危機というのは、世界的にはアジア通貨危機というのがあって、でも国内ではむしろ橋本政権の消費税増税による、経済のハンドリングの失敗というまったく別の要因による、そういうことです。けれども、そもそも通貨危機で起きたことというのは、リスクを低減するはずのポートフォリオ理論のようなものが、危機を拡大したことではなかったか。フランク・ライトが1921年に発表したリスクに関する論文では、計算できるリスクとそうではないリスクがある、というものだったそうですが、これをフリードマンは全部、見積もれるリスクとして見てしまった。結果として、後にリスクを分散すればどうにかなる、というはずだったのですが、そうはならなかった。そして、リスクテイクをしていくのは、「勝ち」しか頭にない、けれども実際には負ける可能性が高い企業家心理を持つ人々なわけです。竹森は、こうした企業家の存在が、経済を動かしているということで評価もするわけですが。けれども、負けというのが見えたときに、誰もがリスクを放棄し、安全なものに資産を移す。そうなったら、あとは連鎖反応。97年当時、北海道拓殖銀行山一證券が資金調達ができずにデフォルト、経営破綻したというのも、本当は何とかなったはずなのに、ということだそうです。
 当然、サブプライム問題も、このローンが証券化されてさまざまなところに組みこまれていたら、そりゃ連鎖していくよな、というものです。そして、これは97年の危機を乗りきったグリーンスパンが残していった危機でもある、という。
 そういうものです。

 あと、彭見明の「山の郵便配達」(集英社文庫)も読みました。しみじみとします。基本的には、中国農村部を舞台にした短編なんですけれども、近代化とはまったく別の、けれどもそこから逃れられない中国が描かれています。個人的には、「愛情」という作品のタフな感じが好きです。

 おすすめの銭湯の紹介もついでに。
 川口市の元郷にある「福の湯」は、スーパー銭湯並の設備っていうのがすごいです。屋上には露天風呂まであるし、駐車場完備で、銭湯料金。さすがに、ちょっと小さいけれども、でもそれはしょうがないですね。清潔な感じのビルになっている、というところです。とにかく、露天風呂は普通の銭湯によくある、とってつけたようなものではなく、本格的なものだし、おすすめです。
 あと、駒込の「亀の湯」にも行きました。会社の近くということで。お湯はちょうどいい湯加減(ということは、少しぬるめ)だし、だんなは感じがいいし、というようなものでした。

 結局、10月からの新番組で見ているのは、「もやしもん」と「ウルトラセブンX」。
 「ウルトラセブンX」は大人向けということなんだけれど、ブレードランナーの世界にウルトラセブンがいるっていうところが、何かいいです。息子は怪獣さえ出てくればいい、という感じですが。メカもナントカ隊もなく、マトリックスみたいなエージェントたちが地球を守っているという設定。守られる地球人も、けっこう無気力現代人だったりして、それがつらかったりする、という。

 ウルトラオレンジ&エマニエルのCDを買ってしまいました。シンプルなガレージっぽいバックで、でもなぜか英語で歌っています。いや、いいんですけど。