こちら葛飾区水元公園前通信719

tenshinokuma2007-10-17

 先週は1泊で名古屋に行ってきました。場所は国際会議場、ということで熱田神宮の近くでした。
 今回の観光は2ヶ所。まずは、金山にあるボストン美術館レンブラントの銅版画展です。レンブラントっていうと、夜警が有名だけれども、まあ、そんなノリでエッチングやらドライポイントやらでせっせと銅版画もやっていたというわけ。で、ほんとうにこまかいところまでよく彫られていて、見事といえば見事なテクです。でも、結果として、絵に中心がないなあって思いました。ほんとうに、細部を楽しめるのだけれども。
 それはそれとして、レンブラントの一生っていうのも、けっこう不幸だったかもしれません。奥さんは早く亡くなるし、4人の子どものうち3人までもが先に死んでしまう。美術品のコレクターでもあったレンブラントは、おかげで破産するし、ろくなもんじゃないですね。それで、暗い絵を描くというか。光と影っていう。
 でもまあ、なんだかんだ言って、けっこう楽しませてもらいました。

 もう1ヶ所は、国際会議場の裏にある白鳥庭園。何だか由緒正しそうな日本庭園だけれど、できたのは新しい。近代的なシャープさと、狭い世界にさまざまな景色を閉じ込める日本庭園の展開というのが組み合わされて、いかにも国際会議場の裏に日本を造りましたという感じになっています。水を汲み上げて滝をつくるなんていうのは、やはり現代の庭園ですね。でも、そうして涼しげな渓流を再現したり、茶室をつくったりということで、由緒正しくない美しさがあると思いました。

 今回の出張の往復で読んでいたのが、松浦理英子の「犬身」(朝日新聞社)。すっかりセックスから遠くなって、ただひたすら犬になりたいっていう、ドッグセクシュアリティっていうのかな、そういう設定。確かに「裏バージョン」のときも、セックス抜きの同性愛っていう感じだったけれども、さらに一歩深くはまりこんでいるといえば、そうなんだと思うんです。けれども、「親指P」もそうだったのだけれど、ちょっと冗漫かなあって思いました。
 いや、犬になるっていう快感がある一方で、コトはそう簡単に幸せにしてくれなくって、近親相姦っていうか、エゴイスティックな男性のセックスっていうか、なんかそういうものと対決しなきゃいけなくって、それはそれで大変だなあって。うーん、ネタバレにならないように書くのって、難しいなあ。
 でもまあ、ひさしぶりの新作、とても楽しみました。

 ついでに、圓尾雅則の「業界研究シリーズ 電力・ガス」(日経文庫)なんかも読みました。勉強になりました。圓尾はセルサイドのアナリストなんだけれど、そのポジションからほぼ10年間にわたって電力・ガス業界を見てきた、というわけです。市場自由化を通じて、いかに普通の会社になろうとしてきたか、そしてそれが結果として現在、すべてがストップしているという状況、そんなことが分析されています。とても勉強になりました。
 最近、出版社も普通の会社にならなきゃいけないなあって思っているところです。

 杉山大志編著の「これが正しい温暖化対策」(エネルギーフォーラム)もまた、ある意味、勉強になりました。あまりにも消極的な日本の産業界の温暖化対策ですが、その理論武装がこの本でなされています。必ずしも海外で排出権取引環境税もうまくいっていないし、一方で日本のトップランナー方式は成果をあげているので、うまくお金をつかって技術開発すればいいし、無理に京都議定書を守る必要はない。将来は電化が進むけれど、原子力発電を拡大することで、二酸化炭素の排出量は減る。とまあ、そういった内容です。すばらしいですね。原子力はあちこちで止まっているし、排出権取引制度についてはすっかり日本は取り残されているし、というのに。

 そんなわけで、先週はこのほかにも、1日だけビッグサイト東京で「グルメ&ダイニングショー」を手伝ったり、ロマン派学会に行ったりと忙しかったです。

 あと、息子の保育園の運動会もあったし。息子の組みの出し物は、「遊び場(アシビナー)」という沖縄の踊りで、偶然とはいえ、小学生の姉ともども、運動会は沖縄だったのでした。
 でもまあ、実はそれよりも、小さい組の出し物「エビ・カニ」の踊りのときに、こっそりと後の方で楽しそうに踊っている年長組の方が、印象的だったりしました。緊張しなくていいから、楽しかったんだろうな。
 親子リレーは、保育園の狭いトラックを走らなきゃいけなかったので、大変でした。

 そんなわけで、今週はあまり出かけずに、せっせと原稿を書いています。

 そうそう、もうすぐにトーキングヘッズの32号、「幻想少女」が出ます。また、よろしくお願いしますです。