こちら葛飾区水元公園前通信688

 先日の朝日新聞では、少子化によって労働人口が減るということについて、「移民」「女性の活用」「高齢者の活用」というそれぞれの主張を掲載していた。
 でも、これはあまりにもマクロ的な見方、産業経済政策的な見方であり、働く側の視点がない議論だと思う。
 そもそも、少子化対策でも、数字の議論しかできていないような状況なのだけれども。

 働く側の視点から考えれば、第1に労働者の権利が守られることが重要である。とりわけ、「人権」ということをきちんと考えるべきなのだ。
 「移民」については、やはりきちんと受け入れる体制をつくるべきだ。国の間で経済的格差があれば、人は移動する。とりわけフィリピンのように資源が少ない国においては、人材を海外に送ることが何より輸出になってくる。そうしたとき、賃金などの待遇で、日本人と差をつけないこと。もし差を認めてしまうと、企業は安価な労働力として雇用し、結果として「日本人の仕事を奪う」というような構造になりかねない。そうなると、ナショナリズムを煽ることによって、失業者の不満のはけ口が「外国人労働者」に向けられやすい。また、合法的な労働者の受け入れの間口を狭くしてしまえば、非合法な労働者が増えるだけである。
 「移民」と書いたけれども、定着する外国人も出てくるだろう。そこで仕事をし、生活していくということは、当然だけれど、「いずれは祖国に帰る」とは限らないということだ。サッカーでブラジル系日本人が活躍し、相撲界にはハワイ系日本人をはじめとする多くの人種の日本人が登場するように(日本国籍がないと年寄になれない)。地域社会というレベルでも、これをきちんと受け入れる準備をすることが必要だ。
 「女性」についても同様。活用するのではなく、「働きたい人が働ける」状況にするだけでいい。つまり、結婚はともかくとして、出産による不利益をなくすような社会制度を構築していくということだ。まさに、少子化対策が「産めよ増やせよ」ではなく、「子どもを持ちたい人が持てる」というものであるべきだということと同じだ。
 「高齢者」の雇用も支援すればいい。どの政策を採用するか、ではなく、働く側の視点からすれば、すべてを採用すべきなのだ。

 柳沢大臣の発言は、さらに続きがあった。子供を持つことが「健全」だというわけではない。別に持たなくたっていいし、それは個人にゆだねられていることだ。でも、もはや批判するようなものではなく、ただ呆れるばかり。別に柳沢だけが問題なのではない。数字という形でしかモノを見ることができない、多様な個人がいるということが想像できない人が多いということだ。

 「ヘンリー・ミンツバーグの経営論」(ダイヤモンド社)はおすすめ。このメールを読んでいる人は、すでに何らかの形でマネジメントをしていると思うので、「マネジャーの仕事」だけでも読むといいと思う。
 ぼくが理想とするマネジメントっていうのは、メンバーが仕事をしやすい環境を実現させていくっていうことだし、ゴールさえ共有できればいいって思う。それがすべてではないけれども。これから編集者として仕事をしていくにあたっては、そんなことを考えている。著者をリードするのではなく、著者が書きやすい環境を整えていくというような。
 ミンツバーグはマネジメントの正解は一つではないし、ヒーロー型マネジャーがすべてではない、活躍が見えないマネジャーだって必要だということを書いている。
 機会があれば、もうちょっと詳しく書きたいけれども、まあそういうことで。