天鷹「ふるさとの絆」

tenshinokuma2011-12-28

 写真は、天鷹の酒林。製造中。売っているんじゃなくって、蔵で作っていて、その過程を見るのははじめてだった。
 天鷹の話を書いていなかったかな。今月、14日に、省エネの調査を目的とした見学会に行ったのだけど、どうして省エネなのかっていう話。
http://www.tentaka.co.jp/index2.php
 まず、栃木県大田原市にある天鷹酒造は震災の影響を受けており、蔵を建て直すという。
 その上で、これを機に、通年醸造にするということだ。これは、すごく重要なこと。というのも、清酒醸造は、ナショナルブランド(白鶴とか月桂冠とか沢の鶴とか黄桜とか、そういうメーカー)でもなければ、基本的に冬しか醸造しない。低温が重要ということもあるし、ほとんどの蔵は生産量がナショナルブランドより、ゼロは3つも4つも少ないのだから、それは根本的に違う業種かもしれない。
 でも、天鷹の蔵元の問題意識は二つあって、そもそも農閑期の季節労働者として蔵人が働いていた状況は、農業従事者が減少することによって確保が難しくなっているということ。それから、冬季に集中するため、醸造期間中は基本的に休暇がなく、お正月すら仕事という、労働条件としてはけっしていいものではないということ。
 そこで、通年醸造によって、仕事の集中を避けると同時に、通年雇用にしていきたいということだ。
 そこに、エネルギーがどう関係するのか。実は、天鷹のこれからの主力商品は、オーガニック清酒になっていくという。お米は醸造が自然環境を考えたものであるとすれば、エネルギーの部分もまた同様に考えていきたい。とりわけ、通年醸造となると、夏季の冷房・冷却なども考えなきゃいけない。そこで、可能な範囲で合理的で省エネになる蔵にしたいということだった。とりあえず、蒸米の排熱を使った床暖房などを取り入れていて、その本気度が伝わってくる。
 そんなわけで、東京工業大学の先生方を天鷹に紹介し、今回の見学会となったわけだ。
 それにしても、省エネ以上に、通年醸造と通年雇用、労働環境の改善ということは、ものすごく重要なことだと思った。あたりまえのようにお酒を飲んでいるぼくだけど、そういうことに思い至ることは少なかった。でも、労働環境が改善されなければ、働く人はいなくなるし、そうすればおいしい清酒はなくなっている。そのおいしい清酒がこれからも飲めるために、東工大の先生方に活躍してもらえたら、いいなって思う。エネルギーの分野でも、そういうところにつながっていくことって、ある。
 できれば、スマート酒蔵を、東北地方の再建とからめて展開できたら、いいな、とも思っている。別に、お酒だけじゃなく、地方の小規模な製造業をどうやって支援していくのか、ということなんだけど。
 考えてみれば、東北地方の復興が進まないことも、原子力というエネルギー問題だった。そうであれば、少しはエネルギー側の人が借りを返してもいいとも思うんだけどね。
 でもまあ、ぼくは東工大の当事者じゃないし、そこはあくまで期待しちゃうだけ。それはそれとして、来年は来年で、別の仕事を考えなきゃ。
 ということはさておき、じゃあお酒そのものはどうなんだと言われそうなので、きちんと書いておくと、「天鷹」は辛口だけどやわらかみがあって、とてもおいしいです。お酒の味って、蔵元の人柄が出るって思うのだけど、まさにそんなかんじ。おすすめは、「心」の生。純米大吟醸だけど、そんなに高くはない。あと、オーガニック清酒は、純米吟醸。オーガニック米は高いので、つい、精米歩合を下げてしまう酒蔵が多いのだけど、天鷹はそこで妥協しないっていうところが、すごいです。それと、古酒になったのが少しあって、それがいい感じでまったりと熟成しています。とはいえ、オーガニック清酒はほとんど完売。とまあそんなわけですが、でも、一番好きだったのは、「和醸良酒」という限定品だったのですが、市販されていないので、別格だな。
 でも、この年末年始であれば、「ふるさとの絆」という大吟醸酒があるので、これをぜひ。今年の字ですから。