こちら葛飾区水元公園前通信761

tenshinokuma2010-03-19

 写真は、おととい、うっかり御茶ノ水丸善の前で買ってしまった、バーゲン品のセンダックのポップアップ絵本「Mummy」。
 センダックの描く、フランケンシュタインの怪物やミイラ男や狼男が飛び出す。ポップアップがすごくよくできていて。あー、でもお金がなくなってしまった。

 実は、まだ年賀状の発送が終わっていません。いつになることやら。
 そろそろ、花見も考えたいのですが、ちょっと今年は、わかりません。予定が立たないので。

 伊藤計劃の「虐殺器官」(ハヤカワ文庫)を読みました。元々、ミリタリーSFには興味がなかったので、ずっと読まないでいたのですが、伊藤はバラードのファンだというし、そんなこともあって、昨年「ハーモニー」を読み、今年は文庫になったので、こっち。
 読まされましたし、ほんとうに細かいところまでつくりこんであって、「ハーモニー」よりもいい作品だと思いました。そして、この作品を、ぼくがうまく楽しめないというところもありました。それは、悪い意味ではなく、伊藤とぼくとの世界観の違いに起因することだと思います。
 人間観なのかもしれません。伊藤のそれは、人間は生物としてとげとげしいものだけれども、そのように進化してきた。それが意識を持つことだし、意識の中にいろいろなものが埋め込まれている。そうだとしたら、そのとげを抜いてしまうという話が、「ハーモニー」なのかもしれません。そうしたとげとげしい人間がいる世界というのが、9.11をきっかけに姿を表し、というかそもそも、世界各地で紛争が絶えないという。
 たまたま、わけあって、自分が20代のころにかいた短い話を読んでいたのですが、そこで、「ああ、自分はこんな世界観だったな」などと思い返したばかりでした。人間というのはもっとぐずぐずでだらだらした生き物なんじゃないか、だから世界もルーズに消費していく方向にあるんじゃないか、というのがそれでした。同じ残虐な場面というのであれば、人が疎外されて忘れられていくというもの。そういうものだと思います。9.11で感じたのは、とげとげしさよりも、もっと鈍器のような暴力、そんなものでした。それは、虐殺とは違うものです。

 鳩山政権の支持率が下がっていますね。まあ、期待が大きかったという理由はあるでしょう。でも、それだけじゃないと思います。鳩山政権がやろうとしていたことに対して、マスコミがせっせと「No」と言うことです。
 具体的には、子供手当てや高校無償化に対して「財源は?」という問いかけです。
 政治と金の問題も、なぜか本質を外している気がします。

 もちろん、どうしても鳩山首相自身が、ふらふらしているように見えてしまうというのはあります。マスコミがつくる世論を気にしすぎているのでしょうか。
 でも、4年間終わってみて、まあ、良かったかと思えるところに着陸すればいいわけだから、支持率なんて、今はいいと思います。
 オバマ大統領の支持率も下がっているし。

 そんなわけで、鳩山政権がやったこととやらないことについて、考えます。

 職業からいけば、「地球温暖化対策基本法案」のことが、一番関心が高そうに思われるかもしれません。
 閣議決定まで、いろいろもめたし。マイナス25%についてはもっと国民的議論を(とにかく反対)、そして排出権取引の総量規制(キャップ&トレード)に反対、というのが、産業界と労働界、つまりは経団連と連合の意見でした。
 といっても、実は連合そのものは、マイナス25%もキャップ&トレードも推進という立場だったはずなんです。
 言ってしまえば、産業界でいちばんでかい顔をしている鉄鋼と電力、労働界で一番組合の力が強い、やっぱり鉄鋼と電力、その息のかかった民主党議員と経済産業省が、法案の変更を求めていたということです。
 ただし、結論だけを言えば、最初の案に近いものになったということになります。マイナス25%だし、キャップ&トレードはやるし、でも原子力も推進だし、という。
 最初の案になったことで、民主党としては、マニフェスト通りになったということになります。これは、妥当なところでしょう。

 子供手当てと高校無償化も、予定通りという。
 財源の問題について言えば、国債発行でいいじゃん、ということです。景気が悪いから、何かしなきゃいけない、ということで、政府が支出を増やすのは、正しいことだと思います。増税しようにも、そもそも税収が落ち込んでいて、さらなる増税はさらに景気を悪化させるだけだから、今は財源を考えるときではないからです。
 いずれは、税収を増やさなきゃいけないでしょう。基本的には、所得税累進課税を強化すべきだと思っています。まあ、それでも足りないから、消費税は増税されるのかもしれませんが。でもね、昔は消費税がなくてもやっていけなんだけどな。
 法人税については、下げるべきだという意見がありますが、どうなのでしょうか。どこの国でも同じ法人税ならいいんでしょうけれども。
 もっとも、実は子供手当てがストレートに消費増につながるとは思いません。ただし、これは子供の権利として、お金を落としていくという発想が根本にあって、そのことが大事なのだと思っています。だから、金持ちの子供にも。そのかわり、子供のいない人や金持ちは増税になってもいいと思います。金持ちは子供手当手をもらう分、税金が増えるという。子供がいなかったり、子供が成長してしまった家庭では、増税になってしまいますが。でも、少なくとも、子供がいない人でも、将来は今の子供が税金を払って老後を支えてくれるのだから、文句は言えないと思います。
 どうしても、制度として欠陥があったり、北朝鮮国籍の子供に支給されないとか、朝鮮学校に無償化が適用されないとか、そうした議論をしてしまうことは、だめじゃないかって思います。そこは、国は国、人は人ということで。生まれるときに、国籍を選べる人はいません。それどころか、日本国籍の取得はハードル高いし。北朝鮮政府には問題があるけれども、朝鮮文化というアイデンティティはそのこととは別です。それに、本質的なことではないのですが、そこは、差別しないというポジションをとることも、外交にとって悪いことではないとも思います。

 では、景気回復のために、どのような支出を増やすべきかというと、そこに産業政策と社会福祉があると思うのです。でも、そこは、動きが鈍い部分です。
 トヨタプリウス回生ブレーキが問題になっています。でも、この問題を通じて感じたのは、ハイブリッドカーとガソリン車では、違う文化の中に位置付けなきゃいけないのではないか、ということです。自動車はプラグインハイブリッドカーになり、あるいは電気自動車になっていくでしょう。こうした自動車には、ガソリン車の持つ走る楽しみは希薄なのだと思います。むしろ、エネルギー効率を考えながら、移動の便利さを使っていくという。こうした文化をつくりながら、自動車が新しいものにとってかわられるとしたら、自動車メーカーもその関係会社や部品メーカーも、新しいものになっていかなくてはなりません。しかし、とりわけ部品メーカーは変われるのでしょうか。変わるために、政府は支援をするべきではないでしょうか。すなわち、別のクリーン産業になっていくために。
 文化ということを言いました。先日、太陽電池の展示会に行ったときに思ったのですが、太陽電池のセルやモジュールの部分では、日本企業は中国企業に負けると思いました。単純に、コストの問題です。でも、日本企業は、この先、住宅用太陽光発電を大量導入したときに、これを制御しようとしています。つまり、最適なシステムを目指しているということです。このことは、おそらく競争力がある分野だと思います。海外の太陽電池メーカーの多くがベンチャー企業という中にあって、日本企業は総合電機メーカーだったりするのですから。こうした分野の開発も、政府が投資すべき分野です。

 社会福祉も同様です。この分野は、時間をかけて、4年の間に案を完成させればいいと思います。おおざっぱには、今の民主党案は、悪くないと思っています。年金保険の納付額によらない基本的な手当に、年金保険による上乗せというしくみです。ここで、より本質的な財源の話も必要になるわけですが。
 すぐにでもしなきゃいけないのは、医療・介護の建て直しです。アメリカが国民皆保険でつまずいているのに較べると、日本の状況はもっとマシではあるのですが。
 医師不足、とりわけ産科と小児救急は手厚い対策が必要です。勤務医は人間らしく働けるようにしなきゃいけないし。
 介護については、やはり、介護労働者の賃金が低すぎます。そもそも、非正規雇用(パート労働者)を活用するという前提で制度設計されているというところが問題です。このことは、派遣法改正ともシンクロしますし、最低賃金の向上にもつながっています。
 派遣法改正について言えば、そもそも派遣労働者に対しては、正社員よりも高い時給になるようにすべきだと思っています。というか、便利さに対する支払です。そもそも、派遣労働者は派遣会社の社員であるべきだと思っているし、派遣会社が派遣労働者に対して正社員として契約し、相応の給与を支払うべきでしょう。それを派遣と言うかどうかは別にして。そうすると、派遣社員には仕事がなくても派遣会社は給与を支払わなくてはなりません。結果として、コストが高くつくのですが、それは派遣を受け入れる企業が支払うべきものです。そういうことは、今回の改正案にはないのですけどね。
 結局、雇用調整というリスクを、個人に押し付けることはできない、ということです。
 だいたい、30代の年収が200万円も減少しているなんて、むちゃくちゃだと思いません?
 最低賃金についても、これを上げると中小企業は経営できないといいますが、時給1000円で1日8時間、年間240日働いたとしたら、年収はいくらになるのか。年収200万円にも届きません。でも、今はこれ以下です。
 こうした年収の人たちが支払っている(支払えないかもしれないけど)年金が給付される段階になったら、いったいいくらもらえるのでしょうか?今の制度では、十分な年金がもらえないということが見えています。
 国民年金は農業のような仕事を想定しており、老後は子供の世話になるので、多額ではなくていいという発想ですが、業務請負の自営業者だったら、老後は仕事がないです。もちろんそのために、年金の積み増しはできるのですが、けっこう使いにくい制度です。だって、一度設定してしまうと、下げることができないですから。お金があるときは払えるけど、不安定な収入では、支払えなくなってしまいます。
 多分、介護保険は年齢を引き下げて、20歳から、というか、成人年齢を18歳にすべきだと思っているので、そこから支払ってもらっていいと思います。それで介護保険の収入が増えるわけですが、同時に、障害者への介護ということにも使いやすくなるのではないでしょうか。
 というようなことは、やっぱり時間がかかることなので、支持率の低下を気にしないで、しっかりと取り組んでもらいたいというところです。

 今国会で見送られてしまったのが、民法改正案です。選択式夫婦別姓婚外子差別の撤廃といったところです。
 夫婦別姓のことに限っても、きちんと取り組むべきものです。マニフェストにはなかったものなので、もう少し時間をかけてもいいものです。というか、民主党の中にも反対する人がいるので。
 でも、現実問題として、女性が結婚しても自分の姓を変えなくてすむというのは、大きなメリットがあります。アイデンティティが守られるということは、重要なのです。公的な場、具体的には職場においては、結婚したかどうかというのは、どうでもいいことです。けれども、書類上、姓を変えることになるし、通称を使い続けていても、不自然さはあります。
 さらに言えば、問題は夫婦別姓ではなく、女性が男性に劣る立場におかれているということを助長させてしまっているということです。そうでなくて、なぜ大多数の夫婦で女性だけが姓を変えているのでしょうか。男女平等というには、あまりにも不自然です。
 選択式なので、強制するものではありません。ですが、反対する人たちは、「家庭が壊れる」と言います。本当でしょうか? 壊れるのは、家庭ではなく、「家父長制」という男性の既得権益ではないでしょうか?そうだとしたら、そんなものは壊れるべきです。
 だから、「世帯主」とか「戸籍筆頭者」というのもナシにしてほしいのですが。それはともかく、人は家に従属するものではありません。
 婚外子差別も同様です。結婚年齢を男女とも18歳にすべきです。女性だけ16歳というのは、時代錯誤です。
 女性の基本的人権を守る、というポジションは、とても重要なものだし、というか、死刑廃止とともに、基本的人権というものはどういうものなのか、きちんと考え、具体化していくということは、民主党の思想としてアリだと思います。
 そこのところは、すべての政策の根本的な思想として持ってもらいたいし、そこができているなら、民主党を支持し続けてもいいとも思います。そのことが、「生活を守る」ということにもつながっています。
 逆に言えば、選択式夫婦別姓に反対する民主党議員は、なんちゃって民主党なので、さっさと自民党に戻るべきです。

 死刑廃止のことも少し。
 千葉景子法務大臣は、就任以来、死刑執行にサインしていません。これは評価すべきことだと思います。
 死刑が法律で決まっているので、それが執行できないのであれば、法務大臣を辞任すべきだという議論があることは知っています。台湾では、事実、辞任してしまいました。
 ですが、死刑制度そのものが、憲法基本的人権に照らし合わせてみたときに、これに反するとしたらどうでしょうか。その点こそ、重要な論点です。世論調査では、死刑を容認する人が圧倒的多数だといいます。でも、だからこそ、法律の専門家は、そうではないということを、国民に向けて説得していくべきだと思うのです。
 もちろん、冤罪の可能性を指摘することもできますし(亀井静香はこの立場だし、足利事件という事例がある)、ほとんどの国で死刑が執行されていないということや、アムネスティインターナショナルなどから指摘を受けているということもあります。
 でも、何より、死刑という制度が自分たちの権利を侵害しているということが問題だし、そのことを明確にすべきです。
 死刑廃止もまた、4年間の時間を使って実現して欲しいし、その間、死刑執行はペンディングでいいと思います。それは、正等なことだし、堂々とそう言っていいと思います。
 殺人罪の事項廃止は、その布石と考えたいとも思います。過去の事件にさかのぼって適用するのがどうかというのはありますが、まあ、そこはいいと思います。
 ただ、千葉法相が、死刑廃止を明確に言ってくれないのは残念です。まあ、立場として言えないのかもしれません。そうだとしたら、政府の外にいる人間がリードしてもいいと思うのですが。

 普天間基地のことは、一度「放棄」してみてもいいかもしれません。5月という約束が守られなかったとしても、日米関係が急速に悪くなるとも思えないし。ぼくは、グアムでいいと思います。そこに落としいていくのに、時間をかければいいし。
 沖縄の基地を縮小しつつ、東アジアの外交をうまくやっていくという。とりわけ、6カ国会議を成功させていく努力。拉致問題よりも全体的な安全保障です。長期的には、北朝鮮を経済発展させ、次期政権にあって韓国との何らかの合併を想定したシナリオを描いていく、ということではどうでしょうか。
 そのためにも、日本にいる北朝鮮国籍の人を敵にすることはないと思います。
 でも、鳩山政権がそんなことはするとは思えないのですけどね。

 とまあ、鳩山政権については、そんなことを考えています。過大な期待は裏切られるかもしれません。でも、鳩山由紀夫という人の思想は、ある部分では、国民の大多数が追いついていないのかもしれない、と思うときがあります。そのことが足を引っ張ってしまうのかもしれない、とも。本当は、逆にならなきゃいけないはずなのですが。