こちら葛飾区水元公園前通信824

tenshinokuma2014-11-28

 こんばんはです。
 お元気でしょうか。
 もうすぐ12月、なんか、1年は早いですね。

 あんまり気分がすぐれない年末です。世の中、むちゃくちゃでごじゃりまんがな、くらいに。もちろん、総選挙のことです。
 気持ち悪いです。
 とても不思議、というか、マスメディアとかそのへんの評論家とか、どうかと思うんですけど。というのも、アベノミクスって、成功とか失敗とか以前にそもそもなかったし。
 安倍晋三が総理になったら、こんなひどい状況になるっていうことも、冷静に考えれば、誰だって予測できたはずなのに。
 誰もが見たくないものを見ない、そんな結果なのかもしれません。

 ざっくり言うと、2009年の総選挙は、みんなが、「カレー味のうんこ=自民党」よりも「うんこ味のカレー=民主党」の方がいいと思いました。その結果、民主党政権ができました。でも、カレーはうんこ味なので、おいしくありませんでした。しかし、人々は、うんこ味のカレーをカレー味のカレーに改善してもらう努力を惜しみました。一方、自民党はうんこ味のうんこになりました。うんこ味のカレーは偽物だけれども、うんこ味のうんこは本物だということです。確かにほんもののうんこです。2012年の総選挙は、本物であると信じて、「うんこ味のうんこ=安倍自民党」を選びました。でも、しょせんはうんこです。本物のうんこはろくなものではありませんでした。それでも、本物のうんこ味のうんこは、みんなが本物だと信じている間に、もう一度総選挙をすることにしました。
 さて、2014年の総選挙は、「うんこ味のうんこ=安倍自民党」を選ぶのか、「うんこ混じりのカレー=民主党野党共闘」を選ぶのか、ということになっています。
 って、ほんと、救われないですね。どちらがましでしょうか。さすがに、「うんこ味の下痢うんこ=次世代の党」を選ぶことはないと思いますが。

 品がないですか。

 アベノミクスはなかった、というのはこういうことです。
 みんな、第一次安倍内閣がどうだったのか、忘れているふりをしています。でも、思い出しましょう。小泉から政権を譲られた安倍は、それまでの主要な政治課題そっちのけで、まず教育基本法を変えました。というのも、安倍の関心は「大日本帝国を取り戻す」ことしかなかったのですから。そのまま、憲法改正まで行きたかったけれども、参議院選挙で敗北し、おなかが痛くなって辞任しました。

 彼が再び総理になったときも、アベノミクスという掛け声とは別に、興味があったのは、やっぱり「大日本帝国を取り戻す」ことです。それで、秘密保護法とか、憲法解釈変更による集団的自衛権とか、武器輸出とか。その先、道徳の教科化をして、憲法改正へ、という。
 実際に、こうした決定はしましたが、アベノミクスに関する決定は、彼はほとんど何もしていません。
 それどころか、彼はアベノミクスを理解していないし、興味もないのではないか、と思います。

 アベノミクスとは何だったのか。
 3本の矢、と言われます。
第一の矢は、異次元の金融政策。これは、まちがっていないと思います。だから、アベノミクスは受け入れられてしまいました。
デフレというのは需要が不足している状況ですから、通貨を供給するというのは、一時的な政策としてはまちがっていません。インフレターゲットによって、お金が循環するようにしていく。そのことによって、豊かになる、ということです。
インフレターゲット論者は、エコノミストや経済学者にもたくさんいました。民主党に対抗する経済政策として、これを選んだということです。
もっとも、異次元の金融政策というほど、大胆なものではありませんでした。日銀が白川総裁から黒田総裁になったわけですが、白川時代から、通貨は結構供給してきました。ただ、インフレにコミットしなかっただけです。それを、コミットした。認めた。市場はインフレを容認したことになります。
インフレ圧力は、もともとありました。莫大な財政赤字により、円そのものの信頼性がゆらいでいたからです。

 インフレの結果、円安になりました。これも、批判する人がいますが、そもそも日本経済は円高で苦しんできたので、どっちにしろ批判かよ、と思います。
 リーマンショック後、大胆なウォン安によって、韓国経済は活況でした。サムスンとか、けっこう成長したはずです。
 ドルに固定された人民元に対し、米国はいらだっていました。人民元を切り上げないと、貿易収支がおかしくなる、という、それほど中国経済は成長していました。
 こうした中、円だけが高かったのです。デフレ状況下で、国内に需要がないため、貿易黒字になってしまう、ということもありました。

 インフレをもたらした要因は、もう1つあります。一つは原発事故にともなう化石燃料輸入の拡大。これで貿易赤字となりました。これを「国富が流出する」などとわけのわかんないことを言う人もいますが、もともと黒字をためこんでいたし、結果として円安をもたらしたので、OK、のはずです。
 結局、アベノミクスの第一の矢というのは、現状を認めた、というだけのことです。安部はそう話しただけで、それ以上のことはしていません。
 安倍はようするに、何一つ頭を使うことなく、エコノミストの入れ知恵で、第一の矢に至った、ということです。

 第二の矢は財政政策。これも、安倍は何もしていません。というか、むしろ余計なことをしたかもしれません。
 通貨が供給されたのだから、政府は需要とつくりだせば、とりあえずお金がまわることになります。
 しかし、そんなことを考えなくても、復興需要がありました。そのために、補正予算を組んでいます。
 しかも、復興需要とは思えないものにまで、予算がつけられました。これは、民主党時代からなのですが、自民党民主党政権との交渉で、復興の補正予算の使途をかなり拡大解釈させたことによります。
 さらに、復興需要があるにもかかわらず、その他の公共工事もどんどん復活させていきました。代表的なものが、八ッ場ダムです。これは、余計なことです。結果として、建設業ばかりが人手不足になるという状況になりました。さらに、オリンピック需要だのリニアモーターカーだの。
 自民党はかつて、民主党の児童手当などを「バラマキ」と批判しましたが、自民党はそれ以上のバラマキをしているということです。
 では、この公共事業のバラマキは、安倍が考えたのでしょうか。おそらく、違うと思います。自民党そのものが、建設業界と深い関係になっており、そっちに誘導された、くらいでしょう。
 結局、第二の矢の失敗は、財政政策でお金をつぎ込むところを間違えたことです。その結果、内需拡大にはつながりませんでした。

 円安でも、製造拠点は海外に移転しているので、効果がなかったといいます。そうでもありません。輸出産業は、けっこう儲かっています。
 安倍は第三の矢として成長戦略を示そうとしました。これが、どれほど中味がなかったか。しかし、これこそ、安部が考えるべきものであり、同時にそれだけの思考力がなかった、ということになると思います。もっとも、これは、実現しなくて良かったものだとも思います。成長しなくていいということではありません。安部とそのとりまきが考える戦略は、衰退戦略でしかないからです。
 成長戦略ということであれば、円安になっただけで、十分にお釣りが来ます。イノベーションなんて、勝手に民間にやらせておけばいいのです。電力システム改革が、ほぼ唯一のまともな成長戦略であるのは、成長を阻害していた独占事業体を解体する、ということがあるからです。その独占事業体も、安部政権はだんだん解体やめ、の方向に傾きかけていました。
 それ以外は何でしょうか。法人税減税でしょうか。そこまで企業を甘やかすことはないでしょう。消費税増税をそこに突っ込むつもりだったのでしょう。経団連は予定通り、来年の消費税増税を主張していました。
 雇用の岩盤規制撤廃。派遣の年限の撤廃とか、いいかげんにしてほしいというものです。
 OECDのデータによると、2000年以降、日本の平均賃金は通貨ベースで右肩下がりでした。円高だった、ということもありますが、それにしても、年1%くらいの割合で下がっています。こんな国は、OECDでは日本だけです。同じ時期、さすがにウォン安もあって、韓国は1.7倍です。鉱業が景気を支えているオーストラリアも1.5倍です。それ以外の先進国は、なんだかんだいって、1.1〜1.3倍になっています。イタリアもイギリスも、です。
 では、日本は円安になって、賃金が上がったでしょうか。これは、報道されている通り、ほとんど上がっていません。1ドルが80円から110円へと円安になったのだから、給与もそれに合わせて上がらなければ、ドルベースの賃金はものすごく安くなることになります。
 もう、誰も日本の人件費が高いとは言わなくなりました。
 2000年代、日本企業は円高に苦しめられたといいました。それに対応した戦略は、政府が行った雇用の規制緩和と、これによる人件費の削減です。日本企業の経営者も、あまり知恵がないので、戦略ともよべない方法で生き延びてきました。そこで、企業は結果として「人材」という重要な経営資源を失っていきました。
 円安になっても業績が伸びないのは、そもそもの経営資源がないからです。
 それでも、この状況になって、企業はあらためて、戦略を真面目に考えないといけなくなっています。
 つまり、成長戦略を、この分野で政府が考える必要はない、ということです。

 では、どうすれば良かったのでしょうか。インフレに対応して、所得を上げる政策が必要でした。
 例えば、最低賃金の引上げです。時給1000円くらいでも高くないでしょう。それで中小企業が困るといいますが、そんなのは詭弁です。それで困る企業は淘汰されるべきです。淘汰された企業の社長は、時給1000円で働けばいいのではないでしょうか。
 中小企業を保護するのであれば、下請け企業が取引で不利にならないように、厳しく指導すればいいことです。あるいは、下請けが元請けになれるように、支援していくのもいいでしょう。中小企業の組合の交渉力を高めるという指導もあってもいいかもしれません。不可能ではありません。建設工事では、下請け企業の見積もりの中に、従業員の年金や健康保険などの費用を盛り込むよう指導していますし、それができない企業は公共事業を受注することができません。
 また、こうした点について、情報公開を求めていくということも必要でしょう。
 CSR報告書は、環境報告書みたいなイメージですが、労働環境についても書かれていますし、自社だけではなくサプライチェーンにまで及んでいます。ブラック企業と取引しない、ということもまた、CSR報告書に書かれるべきことです。当然、そのためのコストもかかります。でも、それをやっていくことが、情報公開です。

 消費税増税社会保障の財源にする、というのが約束だったはずです。でも、その話はどこに行ったのでしょうか。
 生活保護も切り下げるべきではありませんでした。セーフティネットがあることで、消費にお金をまわしやすくなります。ただでさえ低い捕捉率を、さらに低くしようというのも、どうかと思います。それでも受給者が増えるのは、どう考えたらいいのでしょうか。
 さらに、非正規雇用とからめれば、彼らの老後は、生活保護にならざるを得ません。国民年金すら支払うのがためらわれるような収入ですが、仮にもらったとしても、生活保護受給金額に及ばないでしょう。そもそも、国民年金は、農家や商店など自営業を想定したものですから、定年がありません。あまり働けなくなったときのお金、くらいです。その点、サラリーマンは厚生年金があり、いわゆる2階、3階の部分があります。これのおかげで、定年後が暮らせるわけです。
 雇用を非正規に置き換えるということは、サラリーマンの定年後に必要な2階・3階部分の負担をしないということです。しかし、その負担は、後に税によってまかなわれます。非正規雇用を活用するということは、その企業が社会保障制度のフリーライダーになる、ということです。
 こんなことまでしている企業なら、円安くらいで業績を回復させられるわけもないのかもしれません。

 結局のところ、とるべき戦略は、財政戦略では、公共事業ではなく、社会福祉制度の基盤をつくることだったと思います。これが、成長戦略と一体化します。介護報酬の引上げによる介護労働者の賃金引上げで、人材を確保することが求められます。人材ということでは、教育環境の充実です。誰もが安心して進学できるよう、高校無償化は当然のこと、給付型の奨学金も必要です。人材を育成するのは、大学だけではありません。短大や専門学校についても、奨学金など進学を支援するしくみが必要です。高度な技術を持つ人材が、高校だけで育成されるとは考えにくいし、とりわけ普通科高校ではそうです。実際に高卒の就職内定率が低いのですから、何等かの職業訓練は必要です。また、その結果、専門職となることで、収入も期待できるわけですから、税収も期待していいはずです。
 教育改革は、道徳の教科化などのまぬけなことではないのです。
 さらに言えば、介護労働と同様に、学校の教職員も疲弊しています。ほとんどブラック企業化しているのですから、職場環境の改善も必要でしょう。

 消費税増税は、否定しません。本当に景気が良くなれば、北欧型の福祉社会に向かって、増税するということは、まちがっていないと思います。ですが、景気回復を感じさせない政策をとり続け、さらに格差拡大による内需の縮小が続くようであれば、消費税増税は景気をさらに落ち込ませ、インフレをあわせて、スタグフレーションの状態になるだけです。

 安倍がアベノミクスを理解していないというのは、こうしたお金の循環をどのように引き起こせばいいのか、理解していない、ということです。また、興味もありません。
 経済格差の拡大も、ウェルカムです。その結果、安い労働力が供給されるし、彼らには人生の逆転のために、兵役くらいしかない、ということです。
 貧乏に耐えて、国を守る、こんな美しいものはない、というのが、大日本帝国なのですから。

 それにしても、安倍晋三という人は、自分がどういう立場で、何をしているのかすら、理解できていないのかもしれません。だから、自分が何を批判されているかも理解できないし、なのに批判されていて、とりわけ自民党内での不満が高まっているから、イライラしてて、もはや正常な神経すら損なわれているのかもしれない、とも思います。
 今回の総選挙の目的は、何よりも、自民党内の不満分子の粛清にあるのではないでしょうか。しかも、それ自分に不利になりそうだから、もう、どうかしちゃっている。
 そんな中で行われるのが、今回の総選挙なのだと思います。

 もういいかげん、うんこ味のうんこは、いらないんじゃないですか? 確かに、本物のうんこなんだけどさ。本物のうんこよりは偽物のカレーのがましじゃない? その先、カレーを本物にしていくのは、有権者の声(リクエスト)だと思うんですけどね。

 写真は、昨日のワインの試飲会のようす。